-NOAA/AVHRRを用いた三河湾の温熱環境特性-


人工衛星NOAA

NOAA衛星はアメリカ海洋大気庁(NOAA:National Oceanic And Atmosphere)が管理,運用している気象衛星です.高度約850km,周期が102分の楕円軌道で地球を周回している.衛星の軌道は,太陽周期極軌道と呼ばれ,地球を南北に周りその軌道面は太陽の方向に対して常に同じ角度を保っているので地球全体のほぼ同じ地方時でのデータが集められ同じ場所においては一日で昼間と夜間の二回にわたって推定できることになる.三河湾上空では明け方に通過する.


AVHRRセンサ

AVHRR(Advanced Very High Resolution)はNOAA衛星に搭載されているセンサの一つで,雲の分布や陸の植生,海面の温度分布などの観測に用いられている.AVHRRセンサは,走査鏡を使って地表面からの放射を集める.それは,5個の波長帯に分光され,各波長帯の放射強度が検知器に用いられている半導体の内部光電効果を利用して測定される.検知器には silicon、lnSb、HgCdTe といった半導体がそれぞれの持つ波長特性に合わせて用いられている.センサは,対象物により反射された太陽光が主である波長帯を1〜2のチャンネル(可視チャンネル)で,地表面からの熱赤外放射が主である波長帯を3〜5のチャンネル(赤外チャンネル)で,それぞれ測定している.CH1は可視光,CH2は近赤外を観測していて太陽からの反射を測定していることになる.そのため昼間のみしかデータが得られない.CH4,CH5は熱赤外波長領域を測定していて,地球の地表面および大気の熱放射を測定している.CH3は大気の窓領域と呼ばれる波長領域を観測しており,これは大気による吸収が少ないことからこのように呼ばれている.


利用データ

本研究では日本画像データベース(以下JAIDASと省略)が一般に公開しているデータを用いて解析した.JAIDASは,東北大学東北アジア研究センターと東北大学大学院理学研究科付属大気海洋変動観測研究センターが共同で作成し,利用者に公開している.画像データは,東日本画像と西日本画像があり東日本画像は1990年4月から西日本画像は1994年4月からほぼ毎日のデータが揃っておりJAIDASホームページよりダウンロードできる.

CH1 CH2 CH3 CH4 CH5


海水温の推定

NOAA/AVHRRの赤外線チャンネルCH4,CH5の観測値が海面温度となる.しかし,大気の影響により実際よりも低い値をとる.この影響を現地の水温データ(愛知県水産試験場提供)とマッチさせることで補正する.

夏の水温図 冬の水温図


熱フラックスの算定

求めた海水温と名古屋気象台の観測データを用いて熱フラックスを算出する.短波放射(太陽エネルギー),長波放射(雲や大気中に存在する水蒸気その他微量の気体が出す波長の長い目に見えないエネルギー),顕熱(地表面に接する空気塊が温めるのに費やすエネルギー),潜熱(水を蒸発させるエネルギー),地中伝導熱(貯熱量ともいい地中温度を上昇させるエネルギー)を求める.